top of page

文脈がクリーンをクリーンにする(2)|Context makes Clean clean【翻訳】

Context makes Clean clean (James Lawley,2023)の翻訳です。

 

PDFダウンロードして全文をお読みになる方はこちら

文脈が文脈をクリーンにする
.pdf
ダウンロード:PDF • 2.27MB

(1)はこちら

 

4.文脈的にクリーンな用途限定の質問

 

ペニーと私が問いかける質問5問中4問が基本の質問セットからのものだとして、問いかける質問の残り20%がクリーンである理由には、別の基準があるということになります。


残りの質問のほとんどは、用途限定のクリーンな質問(specialised clean questions)に分類されます。それらは、基本の質問セットや古典的な質問セットのように、普遍的にクリーン(いつでもクリーン)ということではありません。というのも、それらの質問がクリーンとみなされるには一定の条件を満たす必要があるからです。


私たちは自著のであるMetaphor in Mindの中で、「専門家の」質問(*)使用における‘ルール’を定義しました。 (*)a specialist question その本を執筆当時、用途限定の質問をそう呼んでいました。


どの専門家の質問を使用するときにでも、そこには重要なルールがあります。それは、「問いかける質問がクライアントのメタファーが持つ論理(ロジック)と一致していること」です。つまり、それらの質問を問いかけるまでに、その質問を問いかけるのに適切な条件が存在していることが、クライアントから示唆されていなければなりません。

クライアントから直接的に、<前提・クライアントが持つ固有の論理形式・メタファーの論理>が示唆されることもあれば、クライアントの非言語的な振る舞いで、それらが示唆されることもあります。


本の中では、私たちは専門家の質問21個を問いかけつつクリーンであり続けるための適切な条件(文脈)について説明しました。(Metaphors in Mind p.283に記載)

「デイビッド・グローブが質問しさえすれば、それがクリーン」だというわけではありませんでした。私たち誰もがそうであるように、デイビッドにも、時折、クリーンではない質問をする傾向はあったのです!私たちには、デイビッドのクライアントの内部の文脈をモデル化する必要がありました。そして、21の質問をクリーンだと認定しました。


最近、ペニーと私が行ったチェンジ・ワークの逐語録をセルフ・モデリングしました。そこで明らかになったのは、用途限定の質問のうち、たった5つの質問のバリエーションが、私たちが問いかける「文脈的にクリーンな質問」のうちの70%を占めているということでした。


  • そして [知覚者のシンボル]は何が起きてくれたら好いのでしょう? And what would [perceiver symbol] like to have happen?

  • そして […]はどこから(やって)来るのでしょう?    And where does/could […] come from?

  • そして [モノ]に大きさや形はありますか? And does [thing] have a size or a shape?

  • そして [望んでいるアウトカム or 必要条件]のために、(他に)何か起きる必要が/は ありますか? And is there anything (else) that needs to happen for/to [desired Outcome/necessary condition]?

  • そして あなたは[…]をどのように知りますか/わかりますか? And how do you know […]?


この5つを非常に頻繁に使用するため、私はこれらの質問を用途限定の質問Big5(ビッグ・ファイブ)と呼んでいます。

また、Big5に加えて、時々問いかけられる用途限定の質問があります。使用にあたり適切な条件が付記されている質問リストは、この記事の最後にあります。私たちの逐語分析では、このリストに記載されている質問の使用頻度は、おおよそ、1セッションあたり1回でした。

私とペニーがBig5をこれまで使用してきた時と理由については、セクション8(文脈と条件のモデリング)で説明します。

では次に、文脈的にクリーンな質問の3つ目の分類について取り上げます。




5. 斬新な第三のクリーンな質問

   

文脈的にクリーンな質問には、めったに使用されない3種類目の質問があります。クライアントの内側や外側にある特定の状況が存在する時のみに意味を成す質問です。それらの質問は、そのクライアントのメタファー・ランドスケープに特化してあつらえられている(tailored)必要があります。また、クライアントが持つ論理の質を事前に予見することはできないため、それらの質問は、その場で生み出される必要があります。以下は、斬新な文脈的にクリーンな質問の例です。(15、17の質問。二通りのやり方をしています。)

12

​C

ああ、[額を触る] 点々みたいなもの、小さな、すごくちっちゃな、すごく小さな点々があって、そこに、何かの活動みたいなものがある感じがします。

13

J

​命の躍動を始める あなたの頭のそこの 小さな、ちっちゃな、小さい点々。そうして、それらの 小さな ちっちゃな点々は、どんな点々(ですか)

14

C

こうなればいいのにと望んでいる結果、そこまでの軌道みたいなものが見えます。

15

J

そして、こうなればいいというところまでの軌道があなたに見えるとき、最初に見える 最初の点はどんな点(ですか)?

16

C

[大きく息を吐く] 最初の点々(points)は、とても小さくて見えません。でも、点々があるのを感じます。

17

P

そして、あなたには点々が見えない、点々があるのを感じる。

そして、あなたはその最初の点をどこで感じますか

18

C

​額の中心。

[注:この記事内の表形式の例はすべて、『人生の躍動を感じ始める(Starting to Feel of Life)』というウクライナの心理学者と行ったシンボリック・モデリングのセッションの記録からの抜粋です。]   *日本語訳はこちら


例(15、17)では、クライアントのランドスケープに「最初」という発想を導入していますが、なぜ、この2つの質問は、文脈的にクリーンなのでしょうか?「〜までの軌道」という言葉は、クライアントがある方向に向かう「点々」の一連を経験していて、その点々のうちのひとつが、一連の「最初」であることを前提としています。私たちは、「最初」という発想を導入してはいますが、これは、クライアントのメタファー・ランドスケープとは矛盾がなく、文脈的にはクリーンなものとなります。私たちがこの2つの質問を問いかけた理由は、一般的に、一連の「最初」の点(ポイントや出来事)は、通常、重要なものだからです。というのも、最初の点がなければ、その後の点々(ポイントや出来事)が発生する可能性は低いからです。


「クリーンであり続けながら」、これらの質問を作成するにはスキルが必要です。それには概念の導入を控える以上のことが関わります。つまり、クライアントの持つ論理に内在するシーケンス(順序)、因果関係、構造的な言葉のみの導入が必要なのです。


ペニーと私のセッションの分析では、これらの質問の使用は稀であることがはっきりしています。斬新なクリーンな質問(novel clean question)と、ビッグ5以外の用途限定の質問(specialised question)を合わせても、これらの使用頻度は(1回のセッションの中で)問いかける質問全体の5%、つまり20回に1回に過ぎません。


また、コーチやセラピストにとっては、セッションに、クライアントの人生における既知の状況を導入するのは、文脈的にはクリーンである場合もあります。これらは、クリーンランゲージを使用したインタビュー(面接)では、トピック的にクリーンな質問と呼ばれています。調査中のトピックについて、インタビュワー(面接者)が「聞き取り対象者は提起していないトピックの特徴」に注意を向けられるようにするからです。

セラピーやコーチングでここに相当するのは、(コーチ/セラピストとクライアントの)両者共が知っているセッションに関連度が高い要素を導入することでしょう。例えば、夫婦のカウンセリングで子供について問いかけるなどがこれにあたります。しかし、文脈的にクリーンな質問のこのような使用については、この記事では扱いません。



6. 推論の程度


他の方法で文脈的にクリーンを説明するとするならば、2002年にケイトリン・ウォーカーが発表した「推論の程度」の理解についてです。

ファシリテーターは、自分自身のやり方で知覚/認識します。その知覚/認識方法は、問いかける質問とクライアントのモデリングの仕方に影響します。


デイビッド・グローブはよく、全ての質問は何か次第(up to something)だと言っていました。言葉を変えれるなら、ありとあらゆる(every)質問には、「質問者自身の世界の仕組みに対する推論」、「質問者自身の<他者が世界の仕組みについて理解する方法>への推論」が含まれています。

(自分の)外側にある世界に対する推論は、物理的世界で同じような経験を持つ人々と共有できる可能性が高いです。しかし(自分の)内側にある世界は、物理的世界よりも個性的です。そして実際、そうであることが多いです。


ここで、図1を参照してください。 「クライアントの内的世界〜構造・時間を経ても一貫性のある論理・可能な知覚の種類〜」に対して行う推論は、図1の上半分が示しているように、クライアントが口頭で、または非言語で提示するものに近いこともあれば、遠いこともあります。


図1の下半分は、言葉に埋め込まれた推論の種類です。

これらのより詳細な説明については、Clean Conversationsをご覧ください。 *日本語訳はこちら

図2は、推論の程度にあてはめて、質問のクリーンさを配置(マッピング)したものです。基本の質問は、真ん中の最初の円にあります。用途限定の質問は、その隣にある2つ目の円に存在します。さらに外側の円に行けば行くほど、ファシリテーターが、そこまでにクライアントが提示していない暗示的構造や概念をどんどんと導入していく質問を含みます。そのため、誘導的な質問が増えていきます。


7. (内在する)固有の論理


推論せずにモデルを構築するのは不可能です。しかしながら、他の推論よりもクリーンな推論があります。

デイビッド・グローブは、私たちに(内在する)固有の論理(inherent logic)という発想を紹介してくれました。つまり、「メタファーや概念の内側には、ある本質的な特徴がそもそも存在している」と推論できるというのです。


例えば、クライアントが「橋を建てたい」と言ったとしましょう。その時、私たちは、クライアントの心の中にある「橋というメタファー」についてはほとんど知りません。ですが「‘橋’を‘橋’と呼ぶためには、ある特徴が必要だ」ということは知っています。


橋とは、「一つ、もしくは、複数の対象物(*)をまたぐもの」です。従って、橋には、二つの終点(end)・間(between)・上/下(over/under)の要素がある可能性が高いのです。可能性が高いというのは、メタファー・ランドスケープの中にはいつでも、ファンタジックな物事が存在するためです。


(*)対象物の例:川、道、隙間など。隙間は、障害物として扱われることがよくあります。


内在する固有の論理を利用するためには、クライアントのメタファー・ランドスケープをモデリングする際に、そもそも存在する特徴を識別する能力が必要です。そして、もちろん「そして その橋はどんな橋ですか?」というような基本の質問から始めるのが適切ではありますが、Big5の用途限定の質問も、橋というメタファーが持つ固有の論理には合うかもしれません。例えば、橋には「起源・特定の大きさ・形」がある傾向があります。そのため、以下の質問を問いかけても理にかなうと言えるでしょう。


  • そして その橋はどこから(やって)来たのでしょう?  And where could that bridge come from?

  • そして その橋に、大きさや形はありますか?  And does that bridge have a size or a shape?


さらに、おそらく、この段階ではクライアントにも「どのように」橋を「建てる(作業)」が発生するかは、特定されていません。ですが、(橋を建てるには)なんらかの「建てるプロセス」が必要だという前提があります。そのため、以下の質問も、文脈的にはクリーンだと言えるでしょう。

  • そして、その橋を建てるのに、何か起きる必要はありますか? And is there anything that needs to happen to build that bridge?


また、以下の質問を使って、クライアントが「建てたい」モチベーション(動機/理由)に注意を向けることもできます。

  • そして、あなたは、どのように その橋を建てたいことを知りますか? (そして あなたは、その橋を建てたいことを どうやって知るのでしょう?) And how do you know you want to build that bridge?


この場合、Big5の5番目の質問、「そして、橋は何が起きてくれたら好いのでしょう?」は、このメタファー固有の論理には適合しません。というのも、「(橋を建てることに対して)橋が意図を持っているという示唆は無い」からです。内在する固有の論理こそが、基本のクリーンな質問「以外」の質問を、文脈的にクリーンにしているものなのです。



Comments


bottom of page