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文脈がクリーンをクリーンにする(5)|Context makes Clean clean【翻訳】

Context makes Clean clean (James Lawley,2023)の翻訳です。

 

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文脈が文脈をクリーンにする
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10.文脈的にクリーンな質問の価値


セッション全体を通じて「文脈的にクリーンな質問」を作成したり、利用したりできるようになるには、さまざまなスキルを必要とします。

  • 何がどのように語られているかを、細かく聞き分ける

  • クライアントのジェスチャーや体の動きにゆるやかな焦点をあて続ける。

  • クリーンな質問と誘導質問の構成要素を理解する。

  • 瞬間瞬間に、シンボルをモデリングする能力。

  • 以下を理解する。

    • 形のロジック

    • 時間(と順序)のロジック

    • 空間のロジック

    • 原因のロジック

    • 前提の仕組み


「斬新で文脈的にクリーンな質問」をその場で作成できるようになるためには、オフラインでの実践練習が不可欠です。ペニーと私の場合、私たちはデイビッド・グローブと長い時間、一緒に過ごしました。彼は、自分にとって正しい、斬新な質問を生み出そうと試していました。

私たちには、彼が、自分の直感的な「クリーンメーター(cleanometer/クリーンの尺度)」に照らし合わせながら、言葉やシンタックス(構文)、リズムなどを変化させた質問のバリエーションを試しているように見えました。そして、そのバリエーションの質問を置いてみて、その質問が、クライアントの知覚空間のどこに、どのように「着地する」か、そういったことを試しているように見えました。


セラピスト向けのリトリートで、自分がデイビッドの実演セッションのクライアントをした時のことを、覚えています。デイビッドがセッションを一時中断したそのとき、私は黙って座っていました。デイビッドは、「さまざまな質問形式を試してみよう」と、参加者と意見交換をしました。

そして、デイビッドが私の方を再び向いたのは、なんと一時間も後のことでした。爆発寸前になっていた私に向かって、デイビッドは、そこまでのやりとりに登場した質問のうちの一つを問いかけました。…私のシステムは、そこまでに登場した全ての質問に反応しており、答えで溢れかえりそうになっていたのです。


こういったスキルをオフラインで身につけ、磨いていくにつれ、クライアントがまだ言葉にしていない内的世界の背景や、暗黙知、などについて問いかける時ですらも、クリーンでいられるようになります。



11.注意点

用途限定の文脈的にクリーンな質問、斬新で文脈的にクリーンな質問は、魅惑的です。

そのため、それらの質問を使用する際に、ファシリテーターは意図せずして、クライアントのクリーンな知覚環境の維持から逸れてしまうことがあります。そうなると、推論や推測にファシリテーターの論理が導入されることになります。そして、ファシリテーターのロジックが(クライアントの内的世界や質問に)、微妙に、気づかれない形で入り込んでしまいます。


「クリーンな状態」にとどまることは、思う以上に難易度が高いことなのです。高度な実践経験を積んだ人でさえも、基本セット以外の質問を使うときに100%クリーンな状態でいるのは難しいと気づくかもしれません。セクション6の図2「クリーンな質問〜誘導的な質問への連続体」の矢印が表していたように、ファシリテーターの質問が外側の円へと滑り落ちるにつれ誘導質問の機会が増えるわけですから、これは滑りやすい坂道のようであるとも言えます。


言いかえるならば、ファシリテーターが基本セット以外の質問を使うことを自分に許可した途端、クライアントのロジックの中に留まることの難しさが増すということになります。特に、斬新な質問を、その場で生み出すときはそうです。


ペニーと私が行った17回分のセッションの逐語録の分析によれば、私たち2人が問いかける質問のうちの約20%が、文脈に関連してクリーンだということがわかりました。ただし、これは平均値です。つまり、用途限定の質問を全く使用しなかったセッションもあれば、最大では1回のセッション内で12回、用途限定の質問を使用したセッションもありました。そして、これは、あくまでも、ペニーと私のセッションについての話だということも書き記しておきたいと思います。


用途限定の質問の使用に関しては、はっきりとしたルールやガイドラインは存在していません。 ですから、文脈的にクリーンな質問を問いかける回数が、私たち2人よりも多いファシリテーターもいれば、問いかける回数が少ないファシリテーターもいるかもしれません。

また、私たちは、長年、用途限定の質問の「誤用」のパターンがあることに注目してきました。最も多いパターンは、まだクライアントが、文脈的にクリーンな質問を問いかけるのに十分な文脈やロジックを提示していない時に発生しています。


表2では、用途限定の質問Big5を問いかけるのに不適切な場合の典型的な例と、よりクリーンな代替の質問を示しています。

不適切な

文脈的にクリーンな質問例

不適切な

文脈/条件/状況

​よりクリーンな質問

C:自由が欲しいです。


F:そして その自由に大きさや形はありますか? 

「自由」は抽象概念で、形という特徴を持っていない可能性がある。

そして、あなたが欲しいその自由は、どんな自由ですか?

C: 私の前途に岩があります。


F: そして その岩は 何が起きてくれたら好いのでしょう?

メタファー・ランドスケープの中で、その「岩」が知覚するシンボル、もしくは、動きのある役割を演じるという示唆/兆候を指し示すものがない。

そして、あなたの前途に岩がある時、あなたは何が起きてくれたら好いのでしょう?

​C: 彼らと向き合うのも選択肢の ひとつです。


F: そして、彼らと向き合うために何が起きる必要がありますか?

クライアントは「彼らと向き合う」について、そうしたい、とも、そうする必要があるとも発言していない。ファシリテーターが「向き合わせよう」とする暗示的な意図を導入している。

そして、彼らと向き合うのも選択肢の一つという時、

他に選択肢はありますか?

C:ただ、次の一歩を踏み出そうとしているところです。


F:その ただ はどこから(やって)来るのでしょう?

「ただ」という言葉の源泉は、現在の状況やクライアントが望んでいるアウトカムと、あまり関係が内容に見える。

そして (あなたが)次の一歩を踏み出すとき

その直前に 何が起きますか?

C: メッセージを受け取っていません。


F: そして あなたは自分がメッセージを受け取っていないことを どのように知りますか?

クライアントが知らない何か、存在しない何か、について、クライアントに「どのようにそれを知っているか」と問いかけることが有益なことはほとんどない。

そして (あなたは)メッセージを受け取っていない、

すると、何が起きますか?

表2:用途限定の質問Big5を問いかけるのが不適切(クリーンではない)典型例


12.まとめ


認知言語学は、私たちが使用する言語と認知構造は一致するという発想に基づいています。それゆえに、私たちは、他者の言葉と行動から、他者が世界を理解する方法に関する事柄を推測することができるのです。


推論を立てるのは簡単です。私たちは、常に、何かを推論しています。

難しいのは、推論を立てる際に、自分自身のロジックからではなく、クライアントが述べた内容・クライアントの持つ論理に基づいて推論を立てることです。そうするために、ある程度は、自分自身が世界を理解する方法を傍によける必要があります。これは、自然にできるようにはなりません。訓練が必要です。


カール・ロジャーズのカウンセリング理論には反しますが、「非指示的な質問」というようなものは存在しません。「ありとあらゆる(every)」質問は指示的です。クリーンな質問ですらもそうです。

質問というものは全て、クライアントに、他のことではないある一つのことを考えるように誘い招いています。違いは、クリーンランゲージの質問が、いかなる内容(コンテンツ/content)も導入しておらず、ただ、普遍的に近い認知構造もしくは、個人特有のロジックのみを使用するところです。


クリーンランゲージの質問は、クライアントに、「その人の内的世界の中にある特定の時空に注意を向ける」ように指示します。(私自身は、「指示する」よりも「誘う(invite)」というメタファーを使用するのを好みます。)そしてクリーンランゲージは、クライアントからすでに提供された情報のみを(必要に応じてクライアントの言葉をそのまま使って)取り入れることでこれを実現しています。


私自身は、グレゴリー・ベイトソンのおかげで、言葉が意味を持つためには文脈が必要だということが理解できるようになりました。私たちは、ここまで検証してきた質問のことを「文脈的にクリーンな質問」と呼ぶことで、その質問が適切な質問となるには、特定の文脈が存在する必要性を強調しています。


通常、セッションの序盤では、クライアントが望んでいるアウトカムを明らかにし、メタファー・ランドスケープを構築するためのファシリテーションが必要です。そこに必要なものは、基本のクリーンな質問が全て兼ね備えています。ランドスケープが現れたなら、そのランドスケープを探究するのは自然な流れです。そこでは、用途限定の質問が役に立ちます。


また、人は何千という質問をすることができます。それにも関わらず、クライアントが自分なりのやり方で自由に答えられる質問はあまりないこと、それこそが魅力的だと私たちは思うのです。

もしも、非誘導的な質問全てについてパターンを検証すれば、それらの質問は「モデリング」のための質問だということがわかります。さらにもう一つ、非誘導的な質問はクライアントのセルフ・モデリングを誘う質問です。クリーンランゲージの質問だけを使用する場合、その特徴の一つは、クリーンランゲージの質問が、どれほど、「ファシリテーターがモデリングするモードにとどまるのをサポートしてくれているか」、ということです。


クリーンランゲージの質問は、クライアントが、内的世界の「いつ」、「どこで」、「何に」気づくかをファシリテーションしているだけではありません。それを超越して、クライアントの自分自身の「論理(ロジック)」のセルフ・モデリングをファシリテーションする方法なのです。


ペニーと私が過去10年間の17回のセッションで行った質問を最近分析したところ、質問の平均割合は次のようになりました:

80% –基本8つのクリーンな質問 15% –用途限定Big5の質問 5% –その他の文脈的にクリーンな質問


つまり、95%、20の質問のうち19が、わずか13の質問(のバリエーション)からだったのです。


インタビュー(面接)で使用される文脈的にクリーンな質問については、文書化されたものがたくさんあります。この記事のここまでに私が書いた内容は、2000年にMetaphors in Mindを出版して以来、初めて、チェンジ・ワークの中での文脈的にクリーンな質問の使用について深く探究したものです。「文脈的にクリーン」を定義づけ、その応用について説明し、実際のセッション例を提示しました。


また、文脈的にクリーンな質問が、コーチングやセラピーで重要な理由についても、検証しました。

  • クリーンさを保ちながら、質問の幅を広げることができるから。

  • クライアントが直接的には参照していないが、背後にに存在すると推測される特徴に注意を向けるように、クライアントを誘うことができるから。

  • クライアントの内側のランドスケープの知覚的な時間と空間に、より精度の高い質問を置くことができるから。

  • ファシリテーターがただ自分の言葉を傾聴しているだけではなく、「その瞬間のモデリング」によって、クライアントの経験の論理も傾聴しているとクライアントにわかるため、深いラポールが築けるから。


そして最後に、クリーンランゲージの質問は「全て」、「文脈的に」クリーンな問題か、または、クリーンではないか、そのどちらかであることを論証できたことを願います。




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