このレポートでは、注意[1]をモデルする新しい方法を述べます。資料は、コーチング/セラピーの文脈の中で紹介されていますが、しかしながら、その他の多くの領域への使用や応用に簡単に一般化できる場合があります。
[1] 注意の定義 「注意(attention)とは、主観的だろうが客観的であろうがなかろうが、他の認知できる情報を無視し、選択的に、情報の離散的な 見地に傾注する行動過程、認知過程だ。」Anderson, John R. (2004). Cognitive Psychology and its Implications (6th ed.). Worth Publishers. p. 519.
「誰もが、注意(attention)とは何か知っている。注意は、同時に(認知)可能だと思われる複数の物事や思考のつながりといったことの中から、はっきりと鮮やかな姿で、ある一つに心を占有する。… それは、他のことに効果的に対処するための何かからの撤退を暗にほのめかし、そして、混乱し呆然とした落ち着きない状態と対極にある状態だ。」James, William (1890). Principles of Psychology. New York: Holt & Co. p. 403
REPROCess(リソースResource、説明Explanation、問題Problem、問題回避策Remedy、アウトカム Outcome、チェンジChange)の開発は、2002年に、私たちが、ファシリテーターはクライアントにアウトカムやゴールを問いかけるところから始めるけれども、やがてまもなくクライアントの多くは問題に深入りしていく、と気がついた時から始まりました。これは、私たちのクライアントにはほとんど起きなかったので、私たちは、それらの相互作用を選び出してモデルすることに決めました。
その結果が、PRO、プロブレム-レメディ-アウトカム、モデルです。 (Tompkins & Lawley, 2006a)。時を経て、私たちは、2008年までにさらに3つの分類を付け加え、REPROCessは、現在の形として出現しました。
このプロジェクトは、人々が質問を問いかけられた時に彼らの注意に何が起きるのか、そして、人々の答えは、主観的経験の構造について何を明らかにするのか、強烈な興味を刺激しました。
コインの裏側のようにもう一方では、私たちは、どうやってファシリテーターはクライアントが注意を払っている事は何かを知り、どのように、クライアントを勇気づける学びや発展の部分に注意するよう招き入れているのかが不思議でした。私たちは、熟練したファシリテーターは3つの原則を使用していると結論づけました。
刻々に、彼らは:
モデリングしている事を知る。例:どのような体験をクライアントが持っているか。
クライアントの目的、クライアントが進んでいく方向と、全体的なフレーム/文脈、クライアントのアウトカムとの関係を知る。
クライアントが有益な変化のために勇気付けられているコンディションかどうか-またはそうでないかをキャリブレーションする。
この記事は、1つ目の原則を規定する方法に全力を注ぎます。その手法は、おそらく2つ目の原則の一部にも当てはまり、また、3つ目の原則も規定するでしょう。私たちは、REPROCessの(概念的な構成の)分類と、クライアントの言葉の中から兆候を認知する方法を述べるところから始めたいと思います。これは、ロバート・ディルツと共に、REPROCessとトッド・エプシュタインのSCOREモデルとを比較した結果、生じました。
この記事の後半は、この分類を使用してクライアントの言葉をモデリングするためのREPROCessの使用法と、セラピー/コーチングセッションを通じて舵をとる方法の実践例にあてています。なぜならば、私たちはシンボリック・モデリングと、個人の変容の文脈におけるデイビッド・グローブのクリーンランゲージを使用することに専門化しており、私達が使用する例は、このソースから得たものだからです。・・・しかし、他の多くの手順(プロセス)や手法も、REPROCessを使用することでより効果が増すに違いありません。
REPROCess
REPROCessは6つの体験の種類を見分けるのに、言語的根拠を置くモデルです。
Resource (リソース/資源) 価値がある、または、便利だと証明できるあらゆる相(アスペクト)
E xplanation(エクスプラネイション/説明) (特に、それらが、原因や理由、正当化の根拠を与える)考えや行動、出来事の関係性を述べたもの。
P roblem (プロブレム/問題) クライアントが好まない現在の困難
R emedy(レメディ/問題回避策) 問題が現れない、問題を和らげる、または問題を避けるための望み。
O utcome(アウトカム/望み) 何か新しく現れて欲しいものへの望み(現在は、決まっていない)
C hange(チェンジ/変化) 違いを生む違い。時間をかけて現れるだろう。 ・・・ 例:出来事「前」と出来事「後」の間など・・・ そして、それゆえ、過去を振り返ってみて初めて見つけ出すことができる。
**訳注:以下、この記事内では、文章中の表記を通常と用語としての使用の違いをはっきりさせるために、リソース、エクスプラネイション、プロブレム、レメディ、チェンジとカタカナ表記で統一します。**
我々独自のものであるPROモデルを形成して以来、プロブレム、レメディ、そしてアウトカムは、特に強い興味を持たれました。
REPROCessでは6種類を見分けるので、それよりは幾分、経験を区切る一般的な方法だと思われるます。誰もが問題に遭遇し、誰もが時には、リソースに満ちています。そして、誰もが自分の問題を取り除いたり和らげたい、新しい何かを生み出したいという望みを持っています。また、誰もが変化を経験し、信念を持ち、なぜ世界がそのようであるか、または、その世界は異なるに違いないという理論を持ちます。
私たちは、REPROCessの中で、クライアントが何に注意しているかを分類したものを示すために、クライアントが発したのと寸分違わない言葉を使います。もちろん、解釈の度合いは常に存在します。しかし、私達が、(この記事の)後方で、私たちのモデリングの逐語録でお見せするように、どのような読心術もクライアントの実際の言葉に基づかせることを必要とします。
REPROCessは、クライアントがその部分での気づきを生む明白な構成(フレームワーク)として使用できうるでしょう。より一般には、REPROCessは、ファシリテーターが、クライアントの情報と注意をモデルし、そのプロセス(経験過程)を探知し導くのを助ける背景としてそこにとどまるでしょう。REPROCessは、主として、セラピー的モデリングを補助するものとしてデザインされたのであって、セラピー的モデリングの代用品ではありません。 (Lawley & Tompkins, 2006).
定義
リソースは、その人が価値を置く人の体験の様相です。リソースは、人がすでに持っていたり、繋がっている何かの場合があります。それは、一般的な特質、スキルや特徴のことがあります。それは、物質的、創造的または象徴的な場合があります。リソースは、その人がそれに価値があると扱う限りは、能力や長所、または何かとの関係性や文脈など、それがどのような形態であるかは問題ではありません。人々はリソースを、そうですね、、、リソースに満ちたものとして、それから、力づけられたり、精神的な高揚、救済、問題解決、神秘的、バランス感覚、着地感、守られている感じ、啓発的に、体験します。・・・それは、人々の選んだメタファーによります。リソースが現れ、その機能が充実すると、リソースは、その人のシステムの他のパーツにも有益な影響を与えることでしょう。鍵のようなリソースのシンボルは、単純にドアを開くこともあるでしょうし、または、すべてのメタファーランドスケープを変容させるダブルバインドを解消することもあるでしょう。(Lawley & Tompkins, 2000).
エクスプラネイション(説明)は、見解、行動と出来事の間の評価を述べたものです。 そこにはしばしば、(結果を生み出す直接の原因となった)根拠や、(それをする)理由、(正当だとする)弁明が含まれます。すべてのエクスプラネイションには、その人自身のもので、どのように世界が働いているであろうかを描いた(明白なまたは、前提条件としてある)信念が含まれます。エクスプラネイションは、実体のない関係性を説明します。エクスプラネイションは、人々がREPROCを筋の通る首尾一貫したまとまりとして結合してくっつける、第一の道のりです。そしてそこにはやっかいなものがあります。時に、メタファーランドスケープの変化よりも恐怖なたった一つのこと - つまり、形態や形、または外観が変わること - は、そのランドスケープを含むくっつき、つまり変容を、変化させます。
私たちは、この説明のプロセスにBecausation(Because:なぜなら、を名詞化した造語)という別名をつけました。なぜなら、クライアントはしょっちゅう、言葉に出してはっきりと、またはそれとなく、「なぜなら」という単語を含んだ説明をするからです。(Tompkins & Lawley, 2006b)
プロブレム(問題)は、その人が好まない困難や難事です。プロブレムの陳述は、はっきり認知できるでしょう。なぜなら、それは以下を含むからです。:
現在に存在する困難。例え、その状況が過去に存在したもの、または未来に発生するだろうということでも。
クライアントが起きると嫌なことを示したり、それを前提条件とする単語やフレーズ。
変わるための何かを望まない状態。
レメディ(問題回避策)は、問題が現れないために、または、取り払われるために、または、問題を避けるための望みです。レメディは、言語的に探知できるでしょう。
なぜなら、それは:
まだ発生していない。
問題に言及する。
欲望、望み、必要性を含むか、問題が変化して欲しいという(表現を)含む。
通常、「(問題)を抱えたくない」のバリエーションである。
問題と問題回避策と欲求の混合物から成る。
「取り除く」メタファー(例:止まる、取り去る、なくなる、取り払う、溶けるなど)がよく使用される。
通常、何かが足りない望みである。
レメディ達は、一回限りの問題を解決するには有効です。しかし、レメディは、進行中の問題や体系的な問題に適用すると、結局、さらなる問題を生み出す場合があります。もしあなたが、時々頭痛がするということであれば、頭痛薬を飲めばいいでしょう。しかし、ずっと頭痛が続いているのに、ただ鎮痛剤を飲んでいるだけでは、あなたはおそらく、ちっともよくならないでしょう。
クライアントは、しばしば、一般常識的なレメディを提案するところからセッションを始めますが、それらのレメディが、持続可能な問題解決法となることは、めったにありません。もし、レメディが実行可能な解決策であれば、クライアントはすでにそれに基づいて行動しているでしょうし、問題もないことでしょうし、あなたに会いに来てはいないでしょう。コーチングやセラピーの文脈の中において、ほとんどのレメディは、実行し得ないか、機能しないか、または、最終的に問題をより悪化させるでしょう。レメディは、鍵となる要素を欠いています。それは、クライアントがその問題を癒した後に望む人生の類、つまり、望ましいアウトカムです。
望ましいアウトカムは、(現在は定めることができない)何か新しいことのための望みです。例えば、生み出したり、自分自身に何かを付け加えたり、または、まだ現れていない世界への望みです。それは認知できるでしょう、なぜなら:
新しい状況や状態または振る舞いを〜したい、望む、欲しい、必要だ、という言葉を含む。
アウトカムは、まだ起きていない。発生していない。
問題にまったく言及しない。
レメディが「離れていく」メタファーを使うのに対し、望ましいアウトカムについての陳述は、とても頻繁に「向かっていく」メタファーを含みます。とはいえ、いつもではありません。例えば、「私は失った魂を見つけたい」は「見つける」という向かっていくメタファーを使用していますが、私たちの定義では、クライアントは「失った魂」という問題のレメディを提案しています。同様に、「私は、結婚生活を正常な状態に戻したい」または、「私は人生を整理したい」などは、にゴールに向かって前に進んでいるような考えには違いありませんが、しかし、それぞれの事例において、PROモデルではレメディとして扱います。
プロブレム、レメディ、アウトカムの種類の区別は、PROモデルに基づきます。 クライアントの知覚 プロブレム、レメディ、またはアウトカムとしてのクライアントの経験の一部をクライアントが知覚しているかどうかの根拠は、クライアントの言葉そのものと、それらの言葉が指し示しうる事に基づかねばなりません。
根拠は、ファシリテーターが問題っぽいと考える何か、または解決法、またはSMARTゴール (Doran, 1981)や「ウェル・フォームド・アウトカム」の条件 (Dilts & DeLozier, 2000, pp. 1548-1550)と一致するかどうかが、重要なのではありません。
PROは、クライアントが望ましいアウトカムを見極めるのをクリーンにファシリテートするのを手助けするために設計されました。PROモデルには、2つの段階があります。 はじめに、私たちは、クライアントがプロブレム、レメディ、アウトカムのどれに取り掛かっているかを限定するために、クライアントが言ったのと寸分違わない言葉を使用します。通例、クライアントの述べる事は以下のような形をとります。
2つ目の段階で、私たちは、クライアントが取り掛かっている種類に属して、クリーンランゲージの質問を用いて返答します。クライアントがプロブレムかレメディに取り掛かっている時は、問題を含む点は最初に認め、そして、後から使用するためにメモを取ります。それから、クライアントは、彼らの注意を望ましいアウトカムにシフトするように誘われます。クライアントが望ましいアウトカムについて述べている時には、私達は、彼らの注意がアウトカムに向かい続けるよう質問を問いかけます。
チェンジは、人間の経験の中にある興味深い類です。
それは、「時間を超えて現れる違い」とグレゴリー・ベイトソンがはっきりさせました。 (1972, p. 452).
彼は、違いは探知できるものであるべきだと付け加えたかもしれません。それは、彼らが以前はどのようだったかとの違いをクライアントが比べることで、一つまたはより多くの特徴が確かめられたり、聴こえたり、感じられたり、または、何か他の方法でそうできるべきです。言い換えるならば、クライアントのシステムの形状が変化するべきです。より高次のパターンへの変化でさえ、低次元な種類の変化の中に具象化するでしょう。しかし、逆もまた同じではありません。人が進む時、その人のすべての細胞はその人と一緒に進みます。しかし、細胞が変化する時、人はほとんど変化しません。
チェンジとみなすためには、クライアントが彼らの内的世界の変化の様相をそこに経験しており、そして、何か前回のセッションから変わったという言語的または行動上の根拠が必要です。チェンジは、技法上の段階ではありません。
それは、ファシリテーターまたはクライアントがする何かではなく、しかるべき条件に現在いる結果として起きる事です。それぞれの変化が「成熟」する事により、クライアントはその違いが確かに違いを生むかどうかに気づき及びます。
私たちは、クライアント自身の知覚から、クライアントのモデルをモデルすることを望みます。クライアントの言葉、彼らの非言語的な文脈の中、そして、彼らが以前に言ったことは、一般に、私たちがクライアントの「している」6つの種類の体験を区別することを可能にします。
もし、曖昧な表現があれば、通常は、「そして、どんな・・・?ですか」や「そして、その・・・について他に何がありますか?」と言ったようなクリーンな質問一つが、その事柄を(どの種類に置くか)を決めるのに十分な情報を提供します。
そうは言っても、私たちは、いつでもクライアントの内的ランドスケープの私たちのモデルを穏やかに保ちます。何故ならば、(a)私たちはモデル間違いをするかもしれないし、(b)クライアントの内部の世界は一瞬で変化できるからです。・・・過激なリソースは問題になりえますし、大抵の恐ろしいシンボルはクライアントの心の眼の前で、正しく変容できるからです。
原文:REPROCess: Modelling Attention 著者:James Lawley and Penny Tompkins 翻訳:クリーンランゲージ翻訳プロジェクト
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