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望みのフレームを体系化する……それは時間|翻訳

望ましいアウトカム、志、ゴール、意向、目標、計画、決意、目的。これらは全て、好ましい未来を描写しています。

未来の「いつ」(にそれらが起きるのか)、そして、「どんな」アウトカムなのかは、私たちがどのようにクライアントが自分の願望を理解するのを容易にするか(促進するか)に、違いを生みます。その人が今ここで決断を下したいのか、それとも、残りの人生を楽しみたいのかどうかで、異なるタイムフレーム(時間枠)と構造的に異なるアウトカムに関係します。私たちは、それらの願望について、それぞれを微妙に違う方法で考え、ワークするのが必要だと考えます。


この記事は、タイムフレーム(時間枠)とクライアントの願望の構造と根拠のモデリングについて考察します。ですが、なぜでしょう?


  • クライアントに、(彼らの内側のランドスケープの中で)どこで何に心を向けるように促すかを案内するため。

  • クライアントに以下の可能性を検討する機会を提供するため。

- 隔たり、ギャップ

- 矛盾、非論理性

- 落とし穴、マイナス面

- 問題になる解決策

- 幅広くより長期的なフレーム(より大きな体系の生態(エコロジー/環境))

- 妥協点

- バインド:パラドックス、行き詰まり、葛藤、ジレンマ

- 置き換え(異なる様子で繰り返されるパターン)

- 制約



<タイムフレーム>


私たちは、出来事の連鎖の体系化のために、前 - 間(最中)- 後の区別をすることを長く推奨してきました。しかし、タイムフレームは何か別物です。タイムフレームは、出来事一つまたは一連の出来事が発生する、相対的な期間を定義します。私たちは、個人やグループが望ましいアウトカムを理解するのを促進する、という点においては、タイムフレームの具体的すぎる体系化の必要性はほとんどないということ、以下4つの一般的な分類で十分だということに気がつきました。


瞬間


セッション中


セッション後


長期に渡る


例えば……


クライアントの望ましいアウトカム

​初期のタイムフレーム

決断する準備ができました。

その瞬間

最初の一歩をどう踏み出せばいいか知りたい。

セッション中

結婚したい。

セッション後

幸せな人生が欲しい。

長期に渡って



トレーニングコースの中で最初にこれらのタイムフレームを図で示した2005年、私たちは、3つの入れ子になった正方形を描き、それに3ボックスモデル(参照:図1)というニックネームをつけました。


<瞬間と期間>


上に並べた4つのタイムフレームを用いて望ましいアウトカムを体系化するのは、話のほんの一部にすぎません。 私たちは、アウトカムの一時的な「構造」もまた考慮に入れます。 時間を想像するために、人は、瞬間と期間の中で、進行中の人生の流れに句読点を打ちます。「期間」は、時間の区切りを暗示する「(時間的に)持続する」という意味のラテン語に由来します。それに対して、「瞬間」は持続しない短い期間です。 期間は共通の文脈で結びつけられた多くの瞬間から構成され、瞬間は、「今」や「(その)セッション」や「私の人生」にある何かと関連していなければいけません。

瞬間は、比喩的に時間の中をあちこち動けたり、(時間が、それぞれの瞬間から独立して存在すると知覚されるかどうかによって)時間を生み出せたりします。 例えば、タイムライン(時間軸)の概念を、フレームごとに制作された映画と比較してみてください。


いくつかのアウトカムは一度だけ起き、はっきりと線引きされた期間があります。他は、何度もそれらが起きるために特定の出来事を必要とします。他のアウトカム達には明らかな始まりがあり、そしてそれらは不特定の期間、継続します。他のアウトカムにとって、その始まりを見極めるのは簡単なことではなく、時に、それらのアウトカムは無期限に継続します。したがって構造的に、アウトカムは以下として分類することができます。



これら6タイプのアウトカムは図式的には図2のように示されます。



<モデリング>


タイムフレームとアウトカム構造は、ほとんどが推測されるもので、はっきりと明示されるのではなくそれとなく暗示されます。このために、私たちは、文脈的で構造的な情報を伝えてくれる微妙な言葉の(言語的、非言語的な)手がかりに気づかなければなりません。


例えば、「人間関係が悪化しました。(私は、)関係を改善して、より良い間柄を保つ必要があります。」と言うクライアントがいるとします。2段階のアウトカムが暗示されています……セッション後まもなく起きる最初の1つ、そして、2つ目は長期的で、継続するアウトカムです。 クライアントは、改善された人間関係の種類と、どのようなより良い間柄を望むかを明確にする必要があるだけではありません。以前に関係が悪化したことがあるのであれば、未来で再びそれが起きうる可能性がある、そう私たちは推測します。 従って、私たちは、関係が再び悪化する「可能性」がある時に、クライアントがサインに気づくのを容易にする(ファシリテートする)つもりです。


対照的に、「来週の交渉に参加する前に、私の立場に自信を持ちたいです。」と言うクライアントは、そのセッション中の、おそらくはある特定の瞬間に、アウトカムを理解できるでしょう。

原型的な枠組みと構造について述べてきましたが、クライアントの理解を体系化し、クライアントが自己を体系化するのをファシリテートする場合、私たちは、それらを規定的には使いません。私たちは「クライアントが」(口に出して)明示したことの適合性、首尾一貫性、妥当性を調べるようにクライアントを誘う質問を問いかけます。私たちは、モデリングを手引きするテンプレートとして、一般的または典型的なアウトカムに対する私たちの知識を使います。これは、私たちの理解をクライアントに押し付けることを意味するわけではありません。私たちは、クライアントの理解と、経験に基づいた自分たちの広範に渡る知識の蓄えを比較対照できます。


比較テンプレートとして一般的な図式を使うと、おおよそ調和と矛盾のどちらもを結果として生みます。調和の欠如は、さらなるモデリングが必要だという明らかなサインです。そして、もしクライアントとファシリテーターが異文化の出身だった場合は、特に細やかさが必要です。



<一個人特有のタイムフレームとアウトカムのタイプ>


「一般的な」タイムフレームとアウトカム構造の組み合わせの多くは、ここまでに述べたことが可能で、それらの組み合わせは、それぞれの人が望ましいアウトカムを理解する方法の大半をカバーすると述べています。


しかしながら、あなたは個人による違いに直面するでしょう。そして、その特異性は、通常、重要度が高いです。例えば、一般的な結婚の図式は、はっきりした始まりと、離婚か死別まで(そのどちらが先に来るにしても)継続する期間を含みます。ですが、私たちはかつて<結婚はこの人生だけではなく「永遠に」続くものである>と定める宗教的信仰を持つクライアントとワークしたことがあります。 私たちには、彼の妻が彼の元を去った時の彼の困惑がよく理解できただけでなく、自分たちが、格別に慎重にクリーンであり続けながら、完全に彼の構造に基づいてワークする必要性があると認識しました。



<証拠(エビデンス)>


人は多くの場合、問題が解決した先を考えずに、問題を改善する方法を探すことで満足しています。人が、自分の考えた解決策の効果や影響を解きほぐしたり、あるいは、自分が問題を解決した後に望むことを考えるのに時間を多く費やすことは、ほとんどありません。このことは、クライアントが「あなたが自分の望みを理解したことを、あなたに知らせるのは何ですか?」と問いかけられた時にはっきりします。言いかえれば、彼らが(ある程度の)成功を体験した証拠として使っているのは何かです。


クライアントが私たちとの最初のセッションにやって来る前に、私たちは、クライアントに起きて欲しいことは何かを考えるように求めるだけではなく、このようにも尋ねます。

「そして、あなたは、それ(その起きて欲しいこと)が起きたことをどのように知るでしょうか?」


もし、最初の質問の答えに望ましいアウトカムが登場しなければ、通常は、2つ目の質問の答えに登場します。私たちが(直接、またはインターネット経由で)顔を合わす時、私たちは、それら2つの質問に対するクライアントの答えを探求するだけでなく、私たちは、その2つの答えの間の関係性も考慮します。


例えば、アルコール依存症を発症した人々は、小康状態、つまり(再度の飲酒を伴うことも伴わない場合もあるけれど)お酒とヘルシーな関係を築くまでに禁酒する期間がどの程度必要かを少なく見積もることがよくあります。 彼らは、数ヶ月か数年の禁酒で十分だろうと考えるかもしれません。それに反して、私たちの経験は、より適切なタイムフレームは10年または永遠(二度と飲まない)の間のどこかだと告げています。


別のシチュエーションとしては、「何者かになる」望みを持つスポーツ選手です。彼/彼女は金メダルを首にかけた時、それが達成できると知っています。 おそらく、そのアウトカムは、ともかくは、たった一度だけの証拠(となること)が起きるまでは継続するでしょう。しかし、この明らかな非適合性は、そのスポーツ選手が、彼らのゴールを達成した後に、または、もしも彼らが一度も首に金メダルをかけなかった場合に、問題となるかもしれません。


証拠には、(1)アウトカムに向かって進んでいる、(2)アウトカムの発生、(3)アウトカムの継続、(4)アウトカムの終了の4つに関係するかどうかに左右される様々な種類の証拠がある可能性があります。


「実用最小限の製品-‘minimum viable product' (MVP) -」というアジャイルの考え方は重要な枠組みですが、私たちは、MVPの枠組みを「実用最小限の進歩(つまり、最初の一歩は何ですか?)」の証拠を表すためにも用います。


はっきりさせておくと、私たちはコーチやセラピストとしての自分たちの仕事が、クライアントにとって「適当な」証拠を明示することだとは考えていません。しかしながら、私たちの役割には、「クライアントが」証拠として知覚することの意味を発見することを促進することが含まれていると思います。 一般的なタイムフレームやアウトカム構造の知識をいくつか持っておくのは、私たちが、そうするのを手助けします。


<変化を促進する>


極めて頻繁に、「そして、あなたは何が起きればいいのでしょう?」の問いかけに対してのクライアントの最初の答えのタイムフレームは、セッション後のある時です。すなわち、一番外側の箱の中か、3つの箱全部の外側にあります。(*図1)

シンボリック・モデリングのセッション中、クライアントの望ましいアウトカムのタイムフレームは、ある時点で進路が逆になるまで、外側の箱から3つの箱の中心に向いて動きがちです。

これは……クライアントが望ましいアウトカムの「結果/効果」の探求から始めるまたはファシリテーターが成熟させようとする「変化」が起きるときに発生します。

図4の矢印は、クライアントの望ましいアウトカムのタイムフレームが、通常、セッション中にどのように変化するかを表しています。


アウトカムのタイムフレームは、クライアントの注意に関わる変化を追跡する一方通行です。


私たちは普段、クライアントが「セッション中に」起きて欲しいことに向けた動きをうながします。そして、(その一瞬に起きる何かとすぐにワークするため)、それはしばしば「生もの(going live)」です。


クライアントが変化を経験すると、その成熟プロセスは、変化の数々の統合と、象徴的な未来へ向けたクライアントのさらなる進化を促進するように設計されます。 また、クライアントが「現実の人生」の文脈上の変化に期待した結果の数々を吟味するのも促進できます。特に、過去にクライアントにとって問題であると証明されたり、未来で再びそうなる可能性があるものについてです。


<時を表す前置詞と副詞>


クリーンランゲージの「発展させる質問」は時間を止めます。一方で、時を表す前置詞と副詞の組み込みは、クライアントに異なるタイムフレームに注意するよう誘います。デイビッド・グローブの典型的な質問の中で、いちばん頻繁に現れるのは……


  • (直)前

  • それから

  • 次に


その他、私たちが、クライアントの望ましいアウトカムの構成次第では有益だと気付いたものは……


  • 今            (Now)

  • 後に           (After)

  • 〜まで          (Until)

  • 〜する間         (While)

  • 〜の間          (During)

  • 〜の向こう        (Beyond)

  • 〜の間に         (Between)

  • 〜の間ずっと       (Throughout)

  • (このセッション)の中で (In (this session))


図式的には、これらは図5の様に表せます。


質問サンプル

そしてあなたは…何が起きればいいのでしょう?


  • …このセッションの間に

  • …今日

  • …次のX分間/時間/日/年で

  • …今

  • …次に

  • …〔望ましいアウトカム〕の前に

  • …〔望ましいアウトカム〕までに

  • …〔望ましいアウトカム〕の後に

  • …〔望ましいアウトカム〕の向こうで

  • …〔望ましいアウトカムが制約されている〕間



そして、…何が起きますか?


  • …〔望ましいアウトカム〕の直前に

  • …〔望ましいアウトカム〕の後に


そして…何が起きる必要がありますか?

  • …〔望ましいアウトカム〕のために

  • …〔条件〕のために

  • …〔望ましいアウトカム〕までに


<レベルとフラクタル>


経験を積んだシンボリック・モデラーとして、私たちは、同時に2つまたはそれ以上の構成レベルとワークするよう心がけています。これらのレベルは、3ボックスモデルのタイムフレームとおおよそ一致します。


タイムフレーム

構成レベル

進行中

生活パターン

認知と行動パターン

その最中

認知と行動の関係性

今(現在)

​その場での体験



私たちは、セッションの中で起きることは、セッションの外で起きる長期的なパターンのフラクタルだと考えます。


私たちのモットーは、「それは今起きている」です。

そうしない良い理由がない限り、私たちの三重からなる志であり、同時に、クライアントのシステムをサポートするためのものは……:


  • 学ぶ……セッション中に望ましいアウトカムを体験することから学ぶ。

  • 学ぶ……どのようにセッション後の望ましいアウトカムを実行(理解)し、そしてそこから学ぶか。

  • 気づく……(セッション中に起きることによって象徴される)数々の経験の類に対応するより多くの方法に気づく。


<望みとワークする>


望ましいアウトカムの結果部分とワークするのと同様に、その望みに注意を払うことも時には重要です。


言語学的に、また構造的に、そしてその最もシンプルな形として、望みは、人と(その人に)知覚されたアウトカムの間の関係性(つながり)です。言い換えるならば、「私は、望む、Xを(原文:I desire X)」です。


クライアントのアウトカム発言の中の望む言葉に対して、クリーンな質問で問いかけることで、私たちは、欲しい、したい、必要だ、〜だったらいいのに、〜を期待するなどに、注意を向けるようにクライアントを誘います。このことは、特に、人が望ましいアウトカムをはっきりと述べるのが困難な時に、有益な選択肢だと証明することができます。


ある極端な例では、クライアントは「(私は)〜したい」という文章を全く完成させることができませんでした。(したい、と言えませんでした)

(*訳注:原文は“I want……”です。日本語に置き換えて、一部意訳しています。)


彼女が「〜したい」と言おうとすると、彼女の言葉は喉で詰まりました。


クライアントが望ましいアウトカムを述べるのに困難を抱えるとき、彼らはある種のバインドパターンを体験していることがしばしばです。


例えば「手に入れたくない人」のように、子供として親の「禁止命令」を身につけた人々は、直接、望みを口に出しても止めないで望みを手にいれる方法を見つけます。私達がそのような人たちに「そして、何が起きればいいのでしょう?」と問いかけるならば、意図せずして、バインドパターンの引き金を引くことになります。そのことはクライアントには困難になり得ると同時に、確かに、問題を誰にもはっきりと見えるようにします。

例え、望んだアウトカムが未来に位置付けられていても、その望みは現在にあります。望ましいアウトカムの古典的な公式は「私は〜が欲しい(I want X)」です。文章構成的そして感情的に、その望みは、アウトカムとの距離よりも、「私」により近いのです。(*訳注:英文では「私は〜が欲しい」は、“I want X”のため、I(私)とwant(欲しい)は、IとXよりも近い。)


通常、クライアントは、「私」から最も遠く離れた文章の中にある言葉に関する質問に答えるのがより簡単であると、気がつきます。


私たちは、どのようにクライアントが応答するか、自分たちが(セッションの中で)いくらか経験するまで、文章の右手側(Iから遠い場所にある言葉)についての問いかけから始める傾向があります。それから、話の道筋を左手側にある言葉(Iに近い方にある言葉)に向けてワークします。


<その他応用>


この記事内では、望ましいアウトカムの話に集中しましたが、通常、経験の他の側面も代わりに使うことができます。


例えば、タイムフレームと構造の見分けは、REPROCessモデルの中の他の分類(リソース、エクスプラネイション、プロブレム、レメディ、チェンジ)のどれにでもにも、同様に適用できます。 同じ様に、それらは、クライアントが、アウトカム発生の必要条件を自己体系化(セルフモデリング)するのを促進することに、応用できます。


例えば、Clean Framework for Changeのコーチングプロセスの中では、クライアントは彼らがいる場所からゴール(AからBまで)に行く方法を見つけ出すのではなく、そのプロセスはBからAへの進路を図式化します。タイムフレームのレンズを透してみると、これは図4で確認した、外側から中心に向かうのと同じ方向性です。



<まとめに>


一個人特有のタイムフレームとアウトカム構造を詳細に体系化できることは、シンボリック・モデラーにとって極めて重要なスキルです。しかしながら、セラピー、コーチングやその他自己啓発の文脈では、高度な特異性は必要とされないことがしばしばです。 ほとんどの場合、この記事の中で述べた単純なモデルの数々は、クライアントの望む未来が実現するために必要な変化を生むファシリテーションを、効果的に効率よく進めるために十分な複雑さを持っています。 これらのモデリングスキルを伸ばすのを手助けするために、私たちは、ダウンロードできるアクティビティをいくつか考案しました。






著者:James Lawley and Penny Tompkins

翻訳:Clean Language translation project



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