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システミックなアウトカム志向とベクタリング(1)


背景


セッション中に何が起きたとしても、優れたファシリテーターやセラピストは次にどこに行くか常に知っているように見えます。彼らはまた、一連の質問を追跡し、クライアントの情報の間を優雅に道案内することができます。私たちは、彼らがどうやってそうしているかを解き明かすために、モデリング・プロジェクトに取りかかりました。私たちが見本にしたのは、デイビッド・グローブ、スティーブ・ド・シェイザー、ロバート・ディルツ、スティーブ・アンドレア(そして、自分達自身)でした。


私たちが特に興味を抱いたのは、ボトム・アップでシステミックな方法でファシリテーターがワークする状況(すなわち、あらかじめ方向付けられた終点-ゴール-や技法から始めるのではなく、アウトカムがプロセス中の相互作用から生まれる状況)でした。

この記事中では、どんなベクタリングがシンボリック・モデリングやその他のデイビッド・グローブの研究の派生物で機能するか、どんなベクタリングがグループワーク、トレーニング、会議の議長、インタビュー、セールス、調査などを含む多くの状況に応用できるかに焦点をあてます。



この記事は5パートに分かれます。




上の図は、ファシリテーター/セラピストがベクタリングをどのように使えるかを表しています。それは「因果関係の環状連鎖」(ベイトソン)を含むプロセスであり、それらの円は「始まり」と「終わり」を持たないため、どこからでも任意でスタートでき、ぐるぐるとシステムを追いかけられます。



便宜上、下に述べることの中では、ファシリテーターの初期状態を#2としてスタートします。

https://cleanlanguage.co.uk/articles/articles/230/1/Vectoring-and-Systemic-Outcome-Orientation/Page1.html

https://cleanlanguage.co.uk/articles/articles/230/1/Vectoring-and-Systemic-Outcome-Orientation/Page1.html

プロセスは反復的に繰り返されます。つまり、それぞれの周回(ラウンド)は、システムの前の状態に基づいて構築されます。



経時的〜時と共に〜


では、プロセスが時と共にどのように機能するかを見ていきましょう。


クライアントのモデルに対するファシリテーターモデル<#2>は、各周回ごとに更新されていきます。そのため、それは、ファシリテーターの観察<#1>の全体履歴を踏まえます。これは<#2>が、〜クライアントのシステムに関する進歩(的な方向性)の感覚を含む〜動的モデルであるべきだということを意味します。


セッション進行中、クライアントは頻繁に、多様な複数の望ましいアウトカムと/または、複数パートのアウトカムを確認します。これらのアウトカムは、セッション中にクライアントによって、しばしば修正されます。


したがって、<#3>は、少しずつ、クライアントの全ての望ましいアウトカム(についての発言)とアウトカムに関する進歩(的な方向性)の履歴を含んでいきます。つまり、<#3>は、動的参照点-Dynamic Reference Point-であるべきです。


クライアントの望ましい内容のアウトカムである#3は、初めは、たった一つの発言から始まるでしょうが、時が経つにつれ、それは、以下について、詳細に述べる豊かな描写になるでしょう。

・対外的な振る舞い

・内部状態

・達成基準

・望ましいアウトカムを維持するための戦略

・メタファー的/シンボル的(象徴的)描写など



推測

ファシリテーターは常に、何らかの方向性を持っています。もし、意識的に選んでいなければ、無意識に選んでいます。デイビッド・グローブは、彼のメンターである社会学者のビル・ローリンズの「あなたがすることは何であれ、いつでも、何か次第です。(whatever you are doing you are always up to something.)」という言葉を引用するのが好きでした。

<#1>で、ファシリテーターは問いかけたばかりの<#5>の質問に関して、今、何が起きたかに気がつきます。これは、重要なフィードバックの循環を生みます。その中で発言されたり行われたりすること全てには情報があります。そして、それは、前の質問とどのようにそれらの言動が関連しているかの情報です。例えば、問題の発言を伴う望みの要求を聞き入れるために、クライアントは内的に何かをしなければならないでしょうか?


私たちは、<#5>でファシリテーターが質問を問いかけた後、そこから、彼ら自身にとって望ましい方向性である<<#4>に向かいそうだと仮定します。これはいつもそういう訳ではありません。ファシリテーターは、クライアントの望ましいアウトカムを体系化するベクトル上にいる意図を持っているに違いなく……そして、現に、彼らの問題をモデリングするような何か他のことをしています。しかしながら、もし、ファシリテーターの意図が問題をモデリングすることだったとしたら、それは、ファシリテーター自身の正義というベクトルです。


重要なことを書いておきましょう。「ベクタリングは、アウトカムに向かうだけではありません」




必要なスキル


ファシリテーターがベクタリングを使うためには、以下に述べる能力のような確実なスキルを発達させる必要があります。


(注1)REPROCessモデル




区別


いつでも、以下の3種類のアウトカムがあります:



〔注1〕

これはもし、クライアントがプロセス/手段に対して望ましいアウトカムを同時に持っていた場合、複雑になりえます。例:「私はYを手段としてXを達成したい。」 この場合、一般には、クライアントは彼らの望ましいアウトカムを彼らにもたらさなかったり、選択肢を減らす手段を選択するでしょう。



ベクタリングの有効性は以下に依存します。

  • #3と#6の同形性(構造的類似)

  • #3と#4の適合性


以下のような場合、プロセスは微妙な修正を必要とします。

  • クライアントが望ましいアウトカムを述べられない時。

  • クライアントが、自己妄想 – 自己欺瞞 – 自己否定のパターンの状態に陥っている時。

  • ファシリテーターが、クライアントの望ましいアウトカムがひどく非生態的だと判断した時。


アウトカム志向の方法でワークするとき、心に留めておく必要がある重要なその他多くの区別があります。

  • 望ましいアウトカムと提起されたレメディ(プロブレムを解決しようとする試み)の違い

  • 望ましいアウトカムと現実のアウトカムの違い?〔タイムフレーム〕

  • アウトカムを「所有する」のは誰で、誰のためのアウトカムなのか? 〔知覚ポジション〕

  • そのアウトカムは、コンテンツ・アウトカム、それともプロセス・アウトカム? 〔レベル/段階〕


では、アウトカムの所有権とコンテンツ/プロセスの区別について、もっと細かく見ていきましょう。 望ましいコンテンツ・アウトカム(内容についてのアウトカム)には、所有者がいて、誰かのためになります。

  • クライアントの人生上にある、クライアント自身、または、他の誰かのための望ましいアウトカム。(アウトカムベースのセラピー/コーチングのために必要)

  • ファシリテーターの為の、クライアントの望ましいアウトカム (例:クライアントは「ファシリテーターを喜ばせて」遊びます)

  • クライアントの為の、ファシリテーターの望ましいコンテンツ・アウトカム(あらかじめ定めたアウトカムのあるセラピーのために必要。同時に、経営上の観点のため。例:「私はクライアントに代金を支払ってもらいたい」

  • ファシリテーター自身の為の、ファシリテーターの望ましいコンテンツ・アウトカム。(変更予定のない商品/見本のモデリングに必要。または、クライアントの費用負担で、ファシリテーターが恩恵を得る利己的利用のため)



望ましいプロセス・アウトカムは、ファシリテーターによって位置付けられるでしょう。(以下を除く。世慣れたクライアントがコンテンツと同じようにプロセスも決定することを望んだ場合……この場合、ファシリテーターは、メタの望ましいプロセス・アウトカムのレベルでのワークすることが必要です。様々なスタイルのファシリテーションは、望ましいプロセス・アウトカムの主要なタイムフレームに基づきます。


  • 瞬間

  • 次の数分間(=ベクトル)

  • 技法に関わる間ずっと(多くのベクトルから成る)

  • そのセッション

  • セッションの範囲を超えて

熟練したファシリテーターは、これら全てのタイムフレームに同時に気づきます。公式なテクニックを使うかもしれないし、使わないかもしれないけれど。





ベクトルは、クライアントのための、ファシリテーターの望ましいプロセス・アウトカムです。ある方向への動きを伴います。

ベクトルは、通常、ベクトルに沿って動くいくつかの方法を十分可能にします。

それらは、ありふれた繰り返し使われてきた既製のベクトルであると同時に、いくつかのベクトルは瞬間的に決定され「あつらえられます」。そして、個々のクライアントの状況にふさわしいようにデザインされます。 大まかには、ベクトルの長さは、通常3〜10個の質問程度です。

「ベクトル」というメタファーを使っている目的は、そのプロセスが、ある方向へ進んでいたり向かっていることを強調するためです。


ボトム・アップ型のモデリングのプロセスにおいて、ベクトルの「終着点」にたどり着くことはほとんどありません 新しいベクトルがプロセスの途中で選択される可能性が高いです。それは、航海中のボートの針路変更と非常によく似ています。(上の図参照) クライアントの望ましいコンテンツ・アウトカムとファシリテーターのベクトル(望ましいプロセス・アウトカム)の区別を、ファシリテーターがはっきりさせておくことが重要です。これを忘れると、ファシリテーターの望ましいコンテンツ・アウトカムが関わってくる可能性が増え、そのプロセスは、どんどんクリーンでなくなります。


鍵となる概念は、「入れ子になっているか、同時に存在するベクトル」です。


例をあげると、最近のセッションデモで、ペニーが最初に選んだベクトルは、「クライアントのために、望ましいアウトカムを明らかにすること」(=ベクトルA)でした。

これがすぐにはやって来なかった(すぐにはクライアントの望ましいアウトカムが明らかにならなかった)ので、「クライアントのために、クライアントの現状のための知覚的ランドスケープを発展させる」(=ベクトルB)という別のベクトル上に針路を変更するまで、ペニーはこのベクトルを開放したままにしました。


ペニーがクライアントにいくつかのシンボルを配置するように促して、現状のランドスケープは形を持ち始めました。

そして、10個目の質問をした際、ペニーは再び問いかけました。「そして、あなたは何が起きればいいのでしょう?」 クライアントの答えは、望ましいアウトカムに対する発言を伴っていました。これでベクトルAが終了しました。

ベクトルBは開放され続けましたが、新しいベクトル「クライアントのために、望ましいアウトカムの理解(知覚)を発展させる」(=ベクトルC)の追跡のために、一時的にわきに避けられました。

ベクトルCは、望ましいアウトカムが明らかになったことに伴う問題が登場し、ペニーが新しいベクトルDをそれにあてがうまで、半ダースの質問の間続きました。



(*訳注:wikipedia T.O.T.E……英語ですが図解が掲載されています)


ベクトルとTOTE(トート)の間には類似性があります。 T.O.T.E(Test、Operate、Test、Exit)モデルは、ジョージ・A・ミラー、ユージーン・ギャランター、カール・プリブラムによって開発された、フィードバックループに基づいて、繰り返される問題を解決する戦略です。(参照:Plan and the Structure of Behavior,1960年出版)


もし、あなたがTOTEに精通していて、クライアントのセッション中に、瞬時にそれをセッションに適用できるのであれば、あなたはおそらくベクトルの概念を必要としないでしょう。しかしながら、もし、あなたがTOTEを全く使ったことがなければ、ベクトルのメタファーは、よりあなた好みかもしれません。


ベクトルのメタファーの一つの長所は、TOTEよりより具体的に表現されていることです。……想像してみてください。抽象的なコンピューターアルゴリズムより、航海中のボートが針路変更によって前進するイメージの方がより具体的です。 私たちは、ゴール(Goal)はそのモデルの一部ではあるのに、TOTEの頭文字に含まれていないのは奇妙だと気づきました。対照的に、ベクトルの定義は方向性を含みます。2つの他の区別は、ベクターはある方向に向かうことについてであり、それに反して、TOTEは(あなたがそこから退場する)最終状態を達成することについてであることです。 セラピーと呼ばれる常に変化し続けるプロセスにおいて、あなたが技巧を使わない場合、ベクターの「終着点」にたどり着くのは、規則ではなく例外です。



ベクトリングを使う全ての瞬間、ファシリテーターは、クライアントのコンテンツ・アウトカムとファシリテーターのプロセスの望ましいアウトカムの両方を心に留めることが必要です。何故ならば、クライアントの望ましいコンテンツ・アウトカムは、時間を経て変わる可能性があるからです。また、最も単純なケースを除いては、クライアントは彼らがいる場所からゴール迄まっすぐに進めないため、ファシリテーターは、一連の動的参照点として、クライアントの望ましいアウトカムを把握する必要があります。


トップ・ダウン型で、技巧ベースのアプローチにおいて、ファシリテーター(セッション提供者)は、プロセス全体が向かっていく場所について意見を持っていて、彼らの仕事はクライアントをその場所へ導くことです。 ボトム・アップ型のベクタリングのアプローチでは、最終結果はクライアントがそこにたどり着くまでわかりません。 それゆえ、ファシリテーターは情報の新しい断片それぞれに照らし合わせて、絶えず、プロセスの方向性を変更する用意をしておく必要があります。


その瞬間の方向性を設定する際、プロセスは、次のベクトルに針路を変える前に、少しの間、それまでのベクトルに沿って進みます。


セッションの全体的な方向性は、従って、全てのベクトルを合わせた総体と、それぞれのベクトルが維持された時間の長さになります。 最後に、上述した中で、私たちは望ましいアウトカム志向に焦点をあてました。その他の重要な構成要素は、現実のアウトカム志向です。一般に、アウトカム志向の焦点は、望ましいアウトカムと現実のアウトカムとの間を、時間をかけて行きつ戻りつします。



<私たちのお手本の資料原典>

Steve Andreas, a video of Steve using The Forgiveness Pattern (CD set).

Robert Dilts, the transcripts and videos of the Northern School of NLP workshop (2006) examples available in Modelling Robert Dilts Modelling.

Steve De Shazer, the transcripts in Words Were Originally Magic (1994).

David Grove, many many hours of observation and the all the transcripts, audio and video tapes listed in his Bibliography of Publications.



<謝辞>

フィル・シャロウが「ベクトル」という術語を思いついたこと、その他このモデルに対しての多大な貢献に感謝します。マリアン・ウェイ、マシュー・ドッドウェル、ウエンディ・サリバン、ジュディ・リーもまた、多く貢献してくれました。



(2)に続く

 

著者:Penny Tompkins and James Lawley

翻訳:Clean Language translation project

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