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変化のためのクリーン・フレームワーク(6):A Clean Framework for Change|翻訳

この記事は A Clean Framework for Changeからの翻訳です

 

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ここまではこちら…(1) (2) (3) (4) (5)

 
 

ステージ4:必要条件を確認する(明らかにする)


ステージ4では、Metaphors in Mindで説明した「戦略的アプローチ」の一つ、「アプローチE:変化の必要条件の確認」を利用します。このアプローチを選択した理由は、このステージが以下のいずれかだからです。

  • 「何が起きる必要があるか」の計画を準備する。

  • クライアントの望ましいアウトカムが実際に起きることに抵抗するかもしれない(クライアントの中にある)隠れたロジックを明らかにする。

必要条件の確認は、クライアントがコーチングに持ち込む類の問題に対して、特によく作用することが証明されています。望ましいアウトカムのランドスケープを発展させ、その影響や効果を検証した後、ステージ4がスタートします。そして、クライアントが「自分は今、何が起きればいいのか」明示します。図6は、必要条件を確認する方法を表しています。

図6

変化のためのクリーン・フレームワークと従来型のコーチング技法には、明確に異なる点があります。このクリーン・フレームワークは、クライアントが、現在地(A)から目的地(B)に向かう方法、つまり「AからBに向かう方法」を見つけ出すのではなく、必要条件を羅針盤(コンパス)に、「BからAへの進路を描き出すプロセス」なのです。


必要条件を確認するには2つの方法があります。

ケン・ウィルバーの言葉を借りるなら「そして、…(のため)には、何が必要ですか?」は深み(depth)に誘い、「そして、…(のため)に、起きる必要があることは、他に何かありますか?」は広がり(span)を招きます。また、この2つは、図7のように組み合わせて使用できます。


図7

重要なのは、必要条件の質問を「あなたがクライアントにとって良いだろうと考えること」にではなく、「望ましいアウトカムの発言」に問いかけることです。もしも、あなたが、暗示的な(言葉になっていない)望ましいアウトカムとワークするなら、そのプロセスはクリーンではなくなるでしょうし、あなたがクライアントを誘導している可能性があります。


例)

クリーンではない(誘導)

クライアント:

(私は)自分の意見をはっきり言った方がいいかもしれません。

ファシリテーター:

そして、(あなたが)自分の意見をはっきり言うためには、何が起きる必要がありますか?

クリーン:

クライアント:

(私は)自分の意見をはっきり言った方がいいかもしれません。

ファシリテーター:

そして、(あなたが)自分の意見をはっきり言った方がいいとき、あなたは何が起きればいいのでしょう?

クライアント:

​まずは、自分に自信が必要です。

ファシリテーター:

​そして、その自分に自信(のため)には、何が起きる必要がありますか?

最初の例では、アウトカムに対して望む言葉がありません。(訳註:クライアントは、「自分の意見をはっきり言いたい」とは発言していない)  2つ目の例の中の「必要」という言葉は、「そして、…(のため)には、何が起きる必要がありますか?」という質問を問いかける許可を与えています。


また、(最初と2つ目の)どちらのルートを通っても、クライアントが同じ結論に辿り着く可能性は十分ありますが、質問をひとつ追加して問いかけることで、クライアントの望みが方向性を定めることを確認し、クライアントにもそれが理解できます。条件を確認した後、その情報は、さまざまなやり方で活用できます。


もっとも一般的なのは以下3つの条件を確認することです。

  1. 最初の条件:クライアントが望ましいアウトカムへ向かう旅を始めるために満たす必要がある条件。この条件は、…クライアントが望むなら(つまり、その人次第)ではありますが…「その人に行える具体的な行動や決断」まで(話を)遡って考えてみることが多いかもしれません。

  2. もっともサリエンスな条件。他の条件次第の条件。 (訳註:サリエンス(Salience):顕著、または、重要。(表面から)突出したもの、突き出たもの。重要という意味を持つ他の単語と分けて使用されているため、このまま使用します。参照:Penny Tompkins & James Lawley (Feb 2009) Attending to Salience.[未翻訳です])

  3. 条件の中に含まれる、問題を含む(そのクライアント)固有のロジック/論理(inherent logic)。 例としては…

    • クライアントが一つかそれ以上の必須条件について「(その条件は)できない」または「(その条件が)満たされることはない」と言う

    • 条件に循環性またはパラドックスが含まれる

    • 条件数が大量で、その全てを満たす可能性が限りなく低い  …など。


最初の一つ、もしくは、最もサリエンスな条件が明らかになった後、必要条件のプロセスは、細部に及ぶまで繰り返されます。そして、ほとんどの場合は、クライアントの「やる(またはやらない)という決意」が身体化/具体化された象徴なモデルになるところで終了です。クライアントの注意を「決意する直前の瞬間」に向ける(またはその瞬間に留まる)ところまでファシリテーションすれば、それで十分です。


特に重要なのは、「クライアントが行うことはクライアント次第で、それは頻繁にセッションの後に起きる」ことで、ファシリテーターはそこにはニュートラルでいてください。クライアントが何をしようがしまいが、その人は、これまでよりも自分の主体性を意識しながら、そうすることになります。それが、クライアントのシステムに影響や効果をもたらすのです。

問題を含むロジックが存在した場合、ファシリテーターの返答は以下の通りです。


「そして、[問題を含むロジック]のとき、あなたは何が起きればいいのでしょう?」


この問いに対するクライアントの返答次第では、そこでセッションが完了するかもしれません。または、もう一度、変化のためのクリーン・フレームワーク全体の旅に出かけることになるかもしれませんし、あるいは、その中間かもしれません。しかしながら、ほとんどのケースでは、「変化が現れるための必要条件」のセルフ・モデリングをファシリテーションすれば、それで十分、(クライアントの)システムは変化し始めると思います。…システムが変化し始めたら、それがステージ5へ移行の合図です。



ステージ5:変化の成熟


変化はいつでも自然に起きる可能性があります。また、頻繁に起きるものでもあります。ですから、変化を成熟させるきっかけの合図もまた、いつでも現れる可能性があります。 私たちのいう変化は、「今、起きた変化」、「クライアントがその瞬間その場で経験した変化」といったような変化です。変化の成熟をファシリテーションするには、3つのプロセスを何度も何度も繰り返す必要があります。

変化が起きた瞬間に、クライアントの注意は、「変化を発展(develop)させること、展開/進化(evolve)させること、拡張(spread)すること」に対して向けられます。(*追記)

追記



図8

成熟には、多くの目的があります。

1つ目は、成熟させることで、クライアントのシステムに変化したランドスケープを統合する機会を提供できます。その中でクライアントは、新しいランドスケープが新たに自律的な(self-sustaining)パターンを形作る方法を知ることができますが、これには時間がかかります。 私たちは、デイビッド・グローブが変化を成熟させるのに、セッション(に使う時間)の三分の一の時間で変化を成熟させることができるのには、大変驚きました。


2つ目は、クライアントがそれまでに語った「問題を含む」条件に、新しいランドスケープがしっかりと(robust)対処できるかどうかを、成熟させることで確認します。

3つ目として、成熟させることで、変化がクライアントのエコロジー・システム(生態系)にとって適切なものであるかどうかを確認します。クライアントのエコロジー・システムは、疑問や懸念、恐怖またはそのほかの問題が浮かび上がらせることで、クライアントのシステムに、「変化に抵抗する」機会を与えるのです。


4つ目に、ここまでの3つが起きる間に同時に、クライアントは新しいメタファーを利用する予行演習をしています。これは後から、クライアントの実際の人生における状況(クライアントが問題があると気づいていた現実の状況)のための予行演習に拡張することができます。


5つ目です。(変化を)成熟させることで、セッション後の数日、数週間、数ヶ月間の変化の方向性が定まることが頻繁にあります。成熟させた結果、以下の3つのうちの1つが発生します。

変化したランドスケープが、以前の問題に対処できるリソースと統合される

​-->

セッション完了

問題が変化を妨げる、または、変化に抵抗する

​-->

ステージ1に戻る

​新しい問題が発生する

​-->

ステージ1に戻る

変化の後、以前の神経回路は依然として存在します(そして、おそらくいつかどこかで役立つことがあるかもしれません)が、新しいパターンの成熟は行動の選択を生み出す可能性があります。そして、その行動が十分な期間、継続された時には、新しいパターンはその人にとって自然で慣れ親しんだ在り方になるでしょう。



 

©︎Penny Tompkins and James Lawley

翻訳:Yukari.I

 

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ステージ4に登場する[論理/ロジック]について、クリーンランゲージ&シンボリック・モデリングで、それをどのように扱っているかを取り上げているこの記事の著者とマリアン・ウェイの3人が開講している、いつでも視聴可能なオンライン配信講座があります。【無料日本語翻訳資料あり(現在シーズン4のみ)】 どうやって、その人固有のロジック/論理ができあがっていくのか、クリーンランゲージでは、その人固有のロジックをどのように捉えているのか、従来のコーチング技法とクリーンランゲージの違いも、シーズン4の最初でわかりやすく説明されています。

どなたでも受講可能です。 初心者向けの内容ではありませんが、シーズン4は、「変化のためのクリーン・フレームワーク」を使ってみたいと思われる方はかなり参考になると思いますのでご紹介します。内容や受講方法など詳しくは、バナー記事からご確認ください。


 

<参考> 本文中に登場する ケン・ウィルバーの著作

 

 

<用語の翻訳について>

まだ翻訳が固まっていない用語、元の英単語が日本語では複数の異なる意味を持つ単語、かなり意訳している単語については、()でくくって元の英単語を表記しています。

また、同じ単語でも、クライアント側の体験とファシリテーター側の体験で理解が異なると思われる単語については、その時々の文章が、クライアント側の体験について書かれているのか、ファシリテーター側の体験について書かれているのかによって、訳を使い分けしています。この記事の中では、Identifyという単語で、それを頻繁に行っています。

より理解を促進するために、すでにクリーンランゲージを使用されている方で、翻訳がしっくりこないと感じる場合は、元の英単語も調べて、ご自身の体験と照らし合わせてみることをお勧めします。

 

誤訳にお気づきの方は、お手数ですが、

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